映画 《ジュブナイル》 と 『ドラえもん』 その2


山崎 貴 監督


その1 その2 その3

 

― 欧米では一般公開するんですか?

動いてるみたいなんですけど、あんまりよく知りません(笑)。リメイクっていう話もちょっとあるみたいです。アメリカの子供たちで。でもそんなものはちらっと出て、消えていくというものなんですが(笑)。興味を示している人はいるみたいです。
イタリアのガキどもの反応はすごかったですよ(編注・『ジュブナイル』はイタリアのジフォーニ映画祭で上映され、子供映画部門グランプリを受賞しました)。あいつらはラブシーンになると、ものすごい盛り上がるんです(笑)。岬が振り返ったりすると、ピューって(笑)。もう大歓声。やっぱラテンだよなあって。ガンゲリオンの活躍シーンも、ものすごい大熱狂になるし。ウワーッて拍手してくれて。そしたら、先生に懐中電灯で頭を叩かれながら座るんですよ。やってる最中は日本語なんてほとんど聞こえない状態で、どうなるんだろうって思ってたんですけど、すごい受けてましたね。希有な体験をしました。

― 国内外問わず、作品的には大成功だったんですね。

作品としては大成功です。反響もめちゃめちゃいいし、自分の中ではバッチリ OK なんですが、興業はまあまあですね。大成功でもなく、大失敗でもなく。

ムーブオーバーがあるということはまあ良しということなんですけど。ちょっとまだビデオとかでフォローしないとやばいかなという感じです。

手塚先生への憧れ

 

― ちなみに子供のころ、好きだった藤子作品とかありますか?

子供の頃は、『エスパー魔美』『パーマン』、特に『怪物くん』が好きでした。小さい頃一家で海に行ってアニメの『怪物くん』の最終回が見れなくて、海に行ったことを忘れて泣いて騒いだ覚えがあります。また、オバ Q のマクラも持っていましたし。ことさらマニアという感じではなかったんですが、生活に密着した感じでした。
大人になってからはやっぱり短編集ですね。すごいレベルが高いというか、あの短さの中によくこれだけ入れたなと思います。 特に最後に、話のどんでん返しじゃなくて心理的などんでん返しがあるやつがあるじゃないですか。「宇宙船製造法」とか。
あと好きな女の子のクローンを作る「恋人製造法」とかが印象に残っています。つい最近読み直して、あの 2 本が特にすごいなと思いました。
あと漫画という意味で純粋に好きだったのは、手塚さんです。『火の鳥』とか。ブラックジャック世代なんで、そこから遡って読んでいきました。
『まんが道』を読んでいると、もの凄い手塚先生を崇拝しているじゃないですか。子供のときそれを読んで思ったのが、わかるわかる(笑)。藤子先生の行動パターンとか、同時代にいたら、そうだろうなあって。トキワ荘のあのころの話っていうのは好きですね。いろんな意味で。生原稿を落とすところもすごい好きですし、わかるわかるって(笑)。あの頃のトキワ荘って楽しかったでしょうね。やっぱり天才級の人たちが揃っていたわけで。同好の士が集まってというのは映画にはなかったですからね。羨ましかったです。

影響を受けた監督

 

― では、影響を受けた映像監督などは?

岩井俊二監督の『打ち上げ花火』とか、スピルバーグ一派の娯楽大作です。ああいうものすべての影響を受けていると思います。観客に向かって作っているという点で。

― 伊丹十三監督(『マルサの女』ほか)の作品にも参加されたんですね。

受けの CG ですね。季節を変えたり、夢の中だったり。予算のある映画作りのノウハウを勉強できましたね。現場での振る舞い方とか、どうすればきちんと話をきいてもらえるのかとか。現場は伊丹さんのカリスマ的権威でまとまっていたから、自分の参考にはあまりなりませんでしたが、憧れの現場でしたね。あそこで学んだことは、好きなことを言わせる人になれば、いいんだと。つっこみの隙をいっぱい作って自然につっこまれる人間になってしまうんですけど、言われることを恐れてはいけないと思いましたね。あまり独善になりすぎちゃうと、どうしても偏ったものになっちゃうし、特に商業作品ですから、いろんな人の意見を聞けるようにならないと。酷いことを言われても、一回は考える。それで、それでも許せるものと許せないものがあるじゃないですか、そういうところで個性が出ればいいかなと。
『ジュブナイル』の撮影の現場は、みんな紳士で楽しかったんですが、プロダクションは皆知っている仲じゃないですか。遠慮がなくて、 DVD を見ていただくとわかると思うんですが、つらい仕事です(笑)。
オレが神だ、みたいな監督もいますけど、そういうスタイルもありだと思います。やっぱり戦場なんで、もの凄い権力者がいて、皆がそれに従ってという、そういうパワーがあって恥じないものが作れるんだったら、それもありだと思います。その方が進行も早いですしね。人の話を聞いていると時間かかりますからね。
何年かしたら、山崎も昔はいい人だったのにねって言われるかもしれませんが(笑)。

生きるか死ぬかの状況

 

― 最近の特撮とかはご覧になってますか?

一応チェックしていますが、昔は知恵と工夫があったけど、最近は何でもできるようになってそんなに感銘を受けることがなくなってきましたね。特撮は好きだし、自分のバックブラウンドなんですが、それだけでは観客の心は動かせない、それだけに安住していたら、とんでもないことになると思います。
試写で見たんですが、『バトル・ロワイヤル』がすごいお勧めです。今の世相にあっているというか、生きるということ、死ぬということを新しいステージを作って真剣に取り上げているんです。こういう映画こそ中学生とかに見て欲しい映画です。急に戦場に放り込まれる体験というのは、知っておくべきじゃないですか。映画での仮想体験としてでも。そういう意味でもいい映画ですね。日常感覚から切り離せない状況の中で殺し合ってかなきゃならないんですよ。だから、すごい追いつめられるんだけど、一番大事なことは好きな女の子のことだったりするんです。好きな女の子を守るために行ったら、その子に殺されちゃうとか。こういう痛いところが随所にあります。で、お互い殺し合えって言っているのに、傷ついてると助けちゃったりとか。なんで、助けたのかわかる?とか言われて。そういうのが修学旅行ぽくていいんですよ。一生懸命知恵を絞って絶対脱出不可能なはずのところをなんとかがんばって脱出するとか。クライマックスばかりなんですよ。
だから、今『漂流教室』をやってみたいんです。生きるか死ぬかの状況に放り込まれるというのが、すごい興味あるんですよ。

― SF 短編の中で映画化してみたい藤子作品はありますか?

お金があるんだったら、さっき言った『宇宙船製造法』ですね。話の骨組は漂流教室に近いんですよ。いい映画になると思います。生きる死ぬの状態に放り込まれたときにどうなるかというのにすごい興味があって、やってみたいです。だから、もっとヘビーなものになると思います。宇宙船のデザインはリニューアルして。
予算がないんだったら、恋人のクローンを作る『恋人製造法』ですね。あれはオチがすごい良かったです。親にばれないように、こっそりクローンの世話をしてやるところとか。
SF 短編は本当に素晴らしいストーリーの宝庫ですね。
他にはパーマンやってみたいです。いいアイデアがあるんですよ。一時は結構真剣に考えました。パーマンはバットマンみたいなかっこいい奴で、でも駄目少年で。
ボイドスーツ(ボイド人が人間に変身するためのスーツ)は、パーマン用に考えたコピーロボットのアイデアを転用したんです。ボタンを押すと、バシッてボタンを押した相手の映像を撮って、ヒュルヒュル、シュパッて変形して、その相手の形になるっていう。
ブービーのアイデアもすごいですよ。巨大なサルになりますからね。人間は、マスクをかぶると、力が強くなるだけですが、サルはかぶると孫悟空的になメチャメチャ強いサルになるんです。ピンチのときに、ブービーっ!て呼ぶと、ぐわーって巨大になってオリを曲げて飛んでくるんです(笑)。
藤子先生自体もなんかドラえもんもそろそろ実写化できるんじゃないかって言っていたみたいですね。タケコプターの視点というのは、きっと面白いと思うんですよ。
藤子先生、映画が好きじゃないですか。前にスターログで西遊記を映画化したいって書いてましたよね。あの中で言われたアイデアで、サルみたいに見える人やブタみたいに見える人、役者としてそういうスタイルをもった人を使いたいというのが面白かったですね。あれ、てっきりやると思っていました。



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