映画 《ジュブナイル》 と 『ドラえもん』 その3


山崎 貴 監督


その1 その2 その3

― 『ドラえもん』の連載初期に描かれた本当の最終回をお読みになったことはありますか?

一番好きなのはジャイアンとけんかする奴。あれには本当にやられました。ジャイアンが負けたよって逃げていくところとか。話は聞いてたんですけど、あれはもう読んだ瞬間泣きました。
帰って行く場面もいいですね。セリフなしで、ドラえもんが見守っている絵があって、次のコマではいなくなっている。あれがもうたまらない。これはもう映画ではできない。漫画表現に対して羨ましいと思ったことはほとんどないんですが、羨ましいと思った希有な例です。オーバーラップでもなんでもなくて、同じ絵でいる、いない。このストイックな表現、終わり方、去り方。素晴らしいです。 2 度と会えない感じは、あの構成が一番いいんですよね。だって引き出しに帰っていくというの今まで何度も繰り返されたことだから、当然また帰ってくることを想起させるじゃないですか。でも、そうじゃなくて、あれはもう 2 度と来ないわけですから、ああでなくてはならない。
そして本当の最終回は『ドラえもん』じゃなきゃできないじゃないですか。『ジュブナイル』の元にした話は、まだ『ドラえもん』から距離がある。仲が良かったとか、思い出が大事だったという部分で、違うキャラクターでも成立するんだけど、本当の最終回はのび太の日々の行動とかが全部ないと、思いとして伝わってこないんですよね。だから、かっぱらうことはできない(笑)。

のび太が本当に感情表現するときは心に来ますよね。普段ご都合主義でゼロレベルから動かないじゃないですか。なんでもドラえもんにやってもらっちゃうし。だから、そいつがちょっと前向きことをしただけで、心を動かされますよね。というのが、『ジュブナイル』にはなかったというか足りなかったので、それが反省点です。

― そういえば監督が書かれた小説版では、甘酸っぱさに苦さもプラスされていて、良かったです。

小説は映画の反省が入っているんですよ。映画は、祐介がもっとのび太のような駄目少年であるべきだったんですよ。弱さ、駄目さをもっと自覚させなきゃいけなかったんです。意外と映画の祐介ってスイスイ何でもやるので、あの「オレが行く!」って言ったときの気持ちの切り替えがあまり効いてなかったなっていうのがあって、小説は徹底的に祐介を駄目野郎にしてやろうと思いました。
今、 2 作目のシナリオを書いているんですけど、『ジュブナイル』の時は、あの最終回が太い骨だったんです。どう振れても、困ったときにはとにかくあそこに戻ればいいっていう灯台だったんです。いま、そういう意味ではフリーなんで、ここをふくらませるともっとこんな風にもできるって全体に影響を与えちゃって、どうしても揺れちゃうんですよ。そう思うとあのストーリーは、すごい立派だったなあと思いますね。

― 小説で書かれていたような『ジュブナイル 2 』の企画はあるのでしょうか?

DVD に笑えるものが入っています。これから映る映像は精神に重大な障害を与える場合がありますので見ないことをお勧めしますという画面があって、それをさらに進めると、短いちょっとしたものが入っています(笑)。
ただ『ジュブナイル 2 』の小説は書きたいですね。頭の中ではできてるんですよ。
第 1 作のあと、ボイド人が宇宙を飛んでいたら、本当に悪い凶悪な奴らがやってきて、ボイド人が大方滅ぼされてしまうんですよ。で、あいつらなら、何とかなるかもしれないって、祐介たちのピッチに電話をかけてくるんです(笑)。海の中で 2 隻船が爆発したけど、奥の船はどうなっているか、よくわからないんですよ。あれ実はあまり破損していなくて、コクーンみたいに繭になって救助を待っているんです。それを復活させて、ボイド人と三バカチーム+岬の連合軍対極悪宇宙人の戦いが始まるという話を是非書いてみたいですね。ボイド人と祐介たちが友情を育むというのもすごく面白くなると思うんですよ。

― 『鵺』の企画はどうなったんですか?

30 億円くらいかかるので、一生、いつか作るって言っているかもしれません(笑)。
自分はまだ監督としての経験値も少ないし、絶対というものがあるわけではないので、できるだけ人の意見を聞いて、沢山いいものを作って行こうと思います。

― 本日は貴重なお話をありがとうございました。

2000.11.3
下北沢にて



*インタビュー記事の無断転載を禁じます*

その1その2


はみだしインタビュー

―ヒロインの鈴木杏ちゃんについて、何か面白いエピソードはありますか。

彼女はお父さんともども『スター・ウォーズ』が好きで、『ジュブナイル』の話が来たときも、相当嬉しかったらしいです。でも逆に特撮に厳しい(笑)。アフレコで途中のできかけの映像が入ることがあるんですが、もう完成している映像を見て、「あれは最終的にどうなるんですか?」って聞かれて、「完成だよ」って言ったら、「えーウソでしょー」って。それで、おい、鈴木杏に舐められてるぞって、泣く泣く直したりしました(笑)。
あと D V D 用にコメントを撮ったのですが、彼女がしゃべろうとすると、ぼくがしゃしゃり出てくるらしくてスタッフに途中で怒られました。
とても頭のいい子ですね。演技もうまいんですが、シナリオや演出などの裏方の才能もあるので、たとえ女優をやめてもそっち方面に進めると思います。


―DVD も出るんですよね。

12 月 22 日に出ます。特典映像がすごいです。メイキングも 10 本入ってますし、怪盗ヤミーとか宇宙人と戦うやつとか劇中劇も入ってます。怪盗ヤミーはワイヤー消しまでしています。宇宙人と戦うやつは、会社の屋上で 5 分で撮ったバカ映画です。できるだけ演技のできない外人を 2 人連れてきて(笑)、よく深夜でほんとに演技のできない奴が出てるやつようなのがやりたくて、みんなで駄目な感じでいいなあって喜んでたら、本人たちは自分の演技が良かったと思ったらしくて、かわいそうなことをしました(笑)。
あと、日本語字幕がすごいんです。日本語字幕って耳の聞こえない子のためのものなんです。漫画の字とドーンって体に来るサブウーファーの音が彼らの知る唯一の効果音らしいんですよ。その話を聞いて、日本語字幕が漫画の効果音みたいになったらいいのにね、そういう風にできるようになったら、私が手で描いちゃいますよって言ったら、技術者ができますよって(笑)。パースがついたドカーンとかドヒューンとか 110 個ぐらい描かされました(笑)。結構変わった不思議なものでした。ガンゲリオンがガシャンて動くとき、「ガシャン」て字幕が出て。漫画字幕、たぶん世界初だと思います(笑)。


―小説版は、あるシークエンス、ごそっと追加されたところがありますね。ここ良かったです。

あれは、書かされたんです。後半ある役で吉岡秀隆(山田洋次監督『男はつらいよ』ほか)くんが出てくるですが、彼はどういう訳で今この場所にいるのか知りたいって言われて。吉岡くんはすごく勉強家でそういうのを大事にする人なんです。今彼というのはどういう気持ちで今ここにいるのか知りたいと言われて。それで、そのとき吉岡さん用に空白のシークエンスを書いたんですよ。そのあと小説を書くことになって、書いておいてよかったなと。ですから、よく見ると文体が少し違うと思います。


 

映画『ジュブナイル』

2000 年夏・全国東宝系公開

出演/香取慎吾 酒井美紀 鈴木杏 遠藤雄弥 清水京太郎  YUKI  緒川たまき 吉岡秀隆

監督・脚本・ SFX /山崎貴

STORY
キャンプに遊びに来ていた小学生祐介、秀隆、俊也、岬たちは夜、林の中で不思議な物体を発見する。それは地球のある資源を狙う宇宙人ボイド人の野望を阻止するため、未来からやってきたロボットのテトラだった。近所の天才発明家神崎さん、岬のいとこ範子さんを巻き込み大バトルが始まる。果たして祐介たちに勝ち目は? そんなとき、テトラはボイド人に対抗するため、密かに秘密兵器ガンゲリオンを作っていた!

CHARACTOR

テトラ( Tetra ): マスコット的な存在の超高性能小型ロボット。映画の重要なカギとなる。
山崎 「テトラはスクリーンタイムが短かくて、ドラえもんみたいに長い時間をかけて感情移入させられないので、最初からかわいいキャラという風に決めました。デザインのイメージは小学生です。リコーダーをランドセルに差して半ズボンをはいてるっていう」

 

ガンゲリオン( Gungelion ): テトラが開発したパワードスーツ。プレイステーション 2 のコントローラで操縦する。

 

ボイド人( Byoid ): クジラ座タウ星第 4 惑星から地球のある資源を奪うためにやってきた。出会った人間そっくりに変身できる。

 

映画『ジュブナイル公式ホームページ』

映画『ジュブナイル』の詳細やDVD 情報が掲載されています。